不透明な時代を見抜く「統計思考力」

  • 感想

前半はあまり面白くなかった。
「グラフに基づいてちゃんとした分析を」とか言ってるのに期間を恣意的に見たり原因は想像だったり。
ちょくちょく章の最後に入るデータ分析と全く関係ない著者の私見がまた微妙。


後半のべき分布を中心とした経済の話は面白かった。
著者が推薦していた以下の文献はチェックしてみたい。
あと、単純になぜアメリカは人口減少期に入らないのか気になった。

マンデルブロ、ハドソン「禁断の市場―フラクタルでみるリスクとリターン―」
高安秀樹経済物理学の発見」「フラクタル
・2008年2月8日、日本共産党志井和夫委員長の国会答弁

  • まとめ

・本文よりも先にデータを見る
・誰かが解釈する前の生データを見る
・自分の仮説に反するデータも集める
・若者本離れ。今の大学生と昔の大学生は構成要員が違う
・図書館の貸出部数6億冊は総出回り部数12億冊の半分!
ジニ係数は一人占めの度合いも表せる
ジニ係数では不平等でも、10人中9人が同じ所得だったら私たちは平等と感じる?
・所得格差は拡大しているが、9割は世帯人数減と高齢化で説明つく
小泉政権で貯蓄がない家庭は増えた?(そもそも政権の効果が現れるのは数年後の気もするが)
・正規社員と非正規社員の格差は存在。無貯金は非正規?
・日本には希望が足りない???
・データの頻度がポアソン分布に従う→データ元の事象は互いに無関係→しかし実際には事象は固まって起きやすい→ポアソン分布に当て嵌めるのは無理があるのでは?
・連続する事象に関連性があるのかないのかは、様々な観点から分析する必要がある
・データを見る際に陥りがちな間違いは、一部だけを見て判断を下してしまうこと
・データを分析する時は、1:平均と分散、2:正規分布べき分布、3:相関、を意識する
・実際には周期性がなくてもそう見える(株価の移動平均)=ユール・スルツキー効果
・独立に変動する値を多数足し合わせたものが正規分布
正規分布の山が左右どちらかに偏ったものがワイブル分布
・ネット調査会社は専用モニターを抱えて全国の縮図を作っている
・「元になる株とオプションの組み合わせの収益率の平均が無リスク金利と等しくなるようオプション価格を決める」=裁定機会を生まないよう価格づけしたのがブラックショールズ式
・裾野の違いは大きな違い。裾野厚い(べき分布)=ファットテイル。正規分布は裾野薄い
・裾野薄い=標準偏差小さい=大損する確率小さく見積もる=楽観的、危険
べき分布は裾野が厚い株価のあてはめに適する分布。平均、分散がない(一意に定まらない)
・コーシー分布はべき分布の一つ
・ショールズ、マートンらを擁する天才集団LTCMはファットテイルを見誤って(分散を定数と見積もって)破綻した。ショールズ、マートンもほぼ全財産を失った
・事実は理論より奇なり。事実は絶対。
・決定係数=R^2は説明変数がどれだけ縦軸、回帰直線を表現しているかの指標(パーセンテージ)
相関係数は0.4以上じゃないとあまり意味がない(乱数でも発生する)。ただし、サンプルサイズが十分大きければ信頼できる。サンプルサイズ400なら相関0.1でも信頼できる
相関係数はまっすぐ度合いを計る。0でも無相関ではない
・一度も起きていない事は予測できないという大原則
合計特殊出生率では、その女性が将来産む人数は「過去の」統計によって予測され、晩婚化で年取ってから産むようになる「今後の」傾向は予測できない→キャッチアップ効果として将来現れる
・従属人口指数(働く人が働かない人をどれだけ支えてるか)が下がる時期が人口ボーナス期、上がる時期が人口オーナス(負担)期
・政策議論にもオープンコラボレーションを。統計の数字使ってロジカルな議論を

・為替レートが1円変わるといくら損をするのか。重要な数字を頭に入れる

不透明な時代を見抜く「統計思考力」

不透明な時代を見抜く「統計思考力」